執筆:EugeneAmnis
品質管理活動の意義
品質管理活動には当然のことながら、多少なりとも資金だけでなく時間などのコストがかかります。そんな中でも品質管理活動を行うことにどのような意味があるのでしょうか。
品質管理活動のコスト
品質管理活動を行うことで生じるコストで一番最初に思いつくのが賃金の問題です。これは会社が出す・出さないのどちらを選んでも発生する問題です。次に品質活動自身に伴う費用です。最後に時間が上げられます。
これらは品質管理活動の実施に伴うコストとされ、更に予防コスト・評価コストに分けられています。このコストは品質コストの2構成要素のひとつです。
もうひとつの構成要素は品質管理活動が不完全であった場合のコストと呼ばれるものです。これは以下の2つに分けられます。
- 内部失敗コスト
- 外部失敗コスト
内部失敗コストは一般的に不良品と呼ばれているものを指します。工程内または自社内で対応ができる状態のコストをいいます。よく製造現場では「不良品は正規品の3倍のコストになる。」といって士気の引き締めをすることがあります。特に経営上、重大なのは次の外部失敗コストです。
これは客先や市場に不良品が流出した状態のコストを表しています。一般的にはリコールと呼ばれているものが該当します。モノではなくサービスを提供している場合は即、この状態になるのではないでしょうか。
ここまで行くと倒産などの経営上の失敗が現実味を帯びてきてしまいます。かと言って本業を圧迫するほど品質管理活動を行うことは本末転倒になります。品質管理を行うことは品質管理活動の実施に伴うコストと品質管理活動が不完全であった場合のコストのバランスを見ながら進める必要があるということです。
だからこそ現場でカイゼン活動を放任主義のように勝手気ままにやらせるのではなく、経営トップが経営の状態を鑑みて方向性を示すことが何より重要です。ただし、決して雁字搦めの体制にしろと言ってるわけではありません。
経営トップが経営状態を熟知しているということは各部門ごとに適切な品質管理目標や傾向を設定することが可能になるはずです。すべての部門に同じ目標を設定することは各部門の専門性を否定することに成りかねず、組織内の暗黙の不公平感と経営トップへの不信へと繋がりかねません。
品質管理の一番のコストは経営トップのコストであると言えるかもしれません。
品質管理の本当の意義
品質管理を行うことで一般的に不良流出やリコールなどの経営上のリスクを低減するメリットがあるのは事実ですが、なにより品質管理活動を組織全体で行うことのメリットは一体感の形成にあるのではないかと思っています。
よく「アットホームな職場です。」とアピールを揶揄するネットミームが掲示板を賑わすことがありますが、品質管理に伴う一体感の形成は個人の感情を抜きにして専門家・プロとしての意見交流による実務の潤滑剤と役割をもたらすことができるはずです。
特にカイゼン活動や小集団活動では日頃、感じているが言いづらい不満や不信の発信・解消を担えるものです。経営トップは活動での記録や報告から潜在的な現場の不安を解消できる機会を得ることができます。実際に解消できれば現場からの労働契約以上の信用を勝ち得るでしょう。
逆に品質管理活動の失敗は決して、不良発生や活動の停滞ではないとも言えます。現場で誰も不満や困りごとを言えない、活動報告のためだけの形だけのカイゼン活動が蔓延ってしまったときこそ品質管理活動の失敗だと言えます。
形だけのカイゼン活動が蔓延る硬直してしまった事業は僅かな変化で致命的なダメージを負いかねません。本業を多角的に見れないことは変化に対応することが難しくなっていることを暗に示しているからです。