執筆:EugeneAmnis
FormeCollector2からFormeStudioへ
去る2021年10月11日にカイゼンハンディターミナルアプリForMeのデータ収集用マクロシートFormeCollector2をFormeStudioに変更しました。実際は名前を変更したに過ぎないのですが、ここには開発者なりの心変わりがあったのでここに記したいと思います。
ポートフォリオとして生まれたForMe
約14年間製造業を経験し、運良くアメリカの製造現場でも研修をさせてもらった事のある自分は仕事をしながら、あるもどかしさを感じつつありました。それは付随業務である書類作成や俗に言う改善活動のやりっぱなし感を種にしたものでした。
製造業は造って終わりではありません。品質保証のための検査記録作業、絶え間ない品質改善活動、不良発生・流出時の対策及び対策書作成など多岐に渡る付随業務があります。これらをすることに嫌気をさしていたわけでなく、記録を残すだけ、対策とっただけと主体業務との連携の薄さに嫌気がさしていたのです。
手間暇かけて付随業務をしても、ただ主体業務時間を削るだけというのはノルマのある業務ではただの負担になるだけでした。付随業務と主体業務との連携を妨げているのは確実に紙媒体を主とした業務によるものでした。紙に記録することで解析やチェックの手間が大きくなってしまっていたのです。
折しもスマホが世に普及しだす頃でした。インダストリー4.0などピカピカの未来を連想させる言葉が力を持っていました。当時からExcelVBAツールを作り、業務に活用されていた自分としては、技術的に一歩も二保も先にあるオンラインのテクノロジーに大きな期待をしていました。実際にテクノロジーを取り入れ、成功した事例もネットの記事に載り始めていました。
それから数年後、個人的な事情からフリーランスになることにしました。不安ではありましたが、自分なりに製造業の頃に感じていた主体業務と付随業務とのギャップを埋めるツールを開発してみようと思い立ちました。そしてその成果をポートフォリオとしてまとめようと。
約1年ほど、技術的な調査を進めるとかつて光って見えていたテクノロジーもメリットばかりではないことに気付かされます。裾野の広い製造業では様々な経営規模の企業が協調して製造を行っています。つまり、比較的に高価であるインターネット環境の整備とシステムを導入するのが難しいことです。
次にシステムの可変性も問題になります。新しく管理項目を増やしたときにすぐにシステム改変ができるかという点です。できればデベロッパーを通さずに行えるほうが良いはずです。更に操作性の問題。あくまで付随業務である以上、学習期間は短ければ短いほうがいいに決まっています。
これらの問題を解決してWEBサービスを運営したとしても、サービス対象者の規模が大きすぎて運用に支障をきたす恐れがあります。最悪、サービスが止まったり、データの破損が合った場合は目も当てられない状況になりかねません。
個人では手に負えないなと思い始めたとき、どこの製造現場でも重宝されていたExcelを思い出しました。Excelなら馴染みがあるので学習負荷も低い。ならばExcelと連携する中・大規模な製造現場でも利用されるハンディターミナルのようなスマホアプリを開発すれば良いと思いつきます。
操作が難しいの一言
試作が完成し、周りに意気揚々とお披露目をしますが反応が悪い。なぜかなと思っていたところ、鉄工所を営んでいるいとこの旦那さんから「すこし、操作が難しいかも。」と言われます。
当時の試作ではExcelで表を作り、その表をコピーしてWEBアプリ等でQRコード化し、それを読み取ってフォーム化するものでした。この手順は今と変わっていませんが、QRコードを作成するまでが煩雑になっていました。
いとこの旦那さんの一言で我にかえった自分はExcelでワンクリックで完結できるようにマクロを組み始めます。ついでに収集したデータの取り込みの為のマクロも組み始めました。そうしてできたのがFormeCollectorとFormeQRCoderです。
この2つをアプリ内にインクルードし、Excelを含む表計算ソフトのインストールされたPCとAndroidアプリForMeさえあれば簡易システムが組める形を取ることになりました。ただ、この時点でもFormeCollectorはあくまでデモ用のツールとしか見ていませんでした。基本的にExcelVBAは個々が組むものだという考えがあったからです。
多機能化と汎用化による複雑化
2017年10月から、具体的な構想を練り始め、翌年4月9日にローンチしたForMeは数少ないユーザーの方に支えられ、2022年時点で5年を超えて運用していました。その間、AndroidアプリのForMe、マクロシートのFormeCollectorは確実に多機能化を進めていきました。特にFormeCollectorは汎用化の為にWindows版はもちろん、Mac版でも同様の機能提供するためにAppleScriptの自動作成機能実装、ユーザーの多いExcel for Mac2011のコードも互換性の為に保全、外国語用のメニューを用意したり、それら以外の機能追加と複雑化していき、開発者である自分すらスクラッチすることは現実的ではないと悟り始めていました。
デモを超えた瞬間でした。ゴミ箱に入れれば使用停止を簡単にできるようにするためにアドインではなくマクロシートにこだわり、デモなのだからと最小限の機能と安定しているコードは触らないという姿勢で続けてきたFormeCollectorは名にそぐわない存在になっていました。
新しく名前を考えるとき、「FormeStudio」と比較的すぐに思いつきましたが、たかがマクロシートにStudioは大袈裟かなと考えあぐねいていました。でも結果的にFormeStudioにしました。今現在でもExcelで社会の基盤を支えている人たちに敬意を送りたいという思いをこめました。
開発者の思いを綴ってみました。少し気恥ずかしいですね。